オンプレミスからAWSへの移行、AWSならではの仕様や考え方に戸惑い、どのように手をつければよいかわからず悩む方も多いかと思います。本記事ではなるべく手間なくAWSへ移行するためのコツを紹介します。
AWSへのリフトアンドシフトで近しい環境を構築
AWSの利用に慣れていない状況でリファクタリングや構成の再設計をすることはリスクが高く、時間もかかります。手間をかけずにAWS環境に移行したい場合にオススメするのがオンプレミスで実現していた環境をそのままAWSに移行(リフト)し、その後徐々に最適化(シフト)を進めていくリフトアンドシフト方式です。最初はサーバー構成を極力変えずにAWSへ移行するため、難易度が低く、システム改修等の導入コストも抑えることができます。
リフトアンドシフト方式で移行する場合に、まずはオンプレミスと同等の環境を構築するため、AWSで汎用的に利用できるIaaSサービスのAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)とAmazon Virtual Private Cloud(VPC)の活用を中心とした設計を行います。
Amazon EC2とは、AWSが提供する仮想サーバーサービスです。一般的なWebサイトのWebアプリケーションサーバーとして利用されるなど、使い勝手がよく汎用的に活用されています。
VPCはAmazon EC2を配置する仮想ネットワークサービスです。
AWSにはインフラストラクチャをAWSが継続的に管理するマネージド型のサービスもあり、AWSのメリットを最大限に享受するためにもぜひとも活用したいサービスですが、最初のステップとしてはEC2とVPCだけを利用した設計を検討してみることをおすすめします。
オンプレミスからAWSに手間なく移行する設計のコツ
AWSのVPCを活用すればオンプレミスのネットワークと近しい構成を設計することができるため、移行の手間が少なくなります。
例えば以下の構成のように基本的な設計を変えずにEC2とVPCを活用して、移行が可能です。
さらにAWSに移行したシステムについてはアベイラビリティゾーン(AWSが提供するデータセンター群)をまたいだ設定ができ、地理的冗長性を簡単に実現できます。
しかし注意が必要な部分として、アベイラビリティゾーンをまたぐ場合サブネットを分ける必要があるため、ロードバランサーのバーチャルIPをどうするかを考える必要があります。
そういった課題がでてきたときに、AWSのマネージドサービスを活用しましょう。
関連記事:【AWS入門】仮想ネットワークのAmazon VPCとは?アクセス制御の仕組みと料金
AWSのマネージドサービスを活用した運用
先程あげた構成例だと、本番環境として運用する際に以下の課題がでてきます。
- ロードバランサーのアクセス増がボトルネックになる
- データベース間のデータの同期
- データベースのバックアップ
- 障害時のマスター・スレーブの復旧
こういった導入のためのシステム改修が少なく済み、かつ導入した場合のメリットが明確な部分についてはマネージドサービスの導入を検討します。今回のケースではElastic Load Balancer(ELB)とRelational Database Service(RDS)を活用することで解決できます。
ロードバランサーの課題を解決するELBの特長
- アベイラビリティゾーンをまたいだ配置・振り分けが可能
- ロードバランサーへのバーチャルIPの付与を意識しなくても冗長化できる
- 高負荷時は自動でスケール
データベースの課題を解決するRDSの特長
- レプリケーション設定は数クリックで
- 障害時のマスター・スレーブの切り替えは自動
- 無停止の自動バックアップ
このようにまずはEC2とVPCだけで使って設計してみましょう。その上で冗長構成での考慮ポイントの軽減などメリットが明確でシステム改修が少なそうな部分にだけマネージドサービスの導入を検討します。まずは導入ハードルの極力低い構成に移行(リフト)して運用してみてから、運用上の課題を解決してくれるサービスを徐々に最適化(シフト)していきます。リフトアンドシフト方式を採用すると、移行のリスクを軽減しつつ、AWSの利用メリットを徐々に拡大していくことができます。
リフトアンドシフト方式を採用する場合のポイントは、移行(リフト)することが目的ではなく、最適化(シフト)することが目的であることを運用開始後も忘れないことです。EC2やVPCは古くからあるAWSのサービスではありますが、常にアップデートし続けています。新機能はチェックして、自社に必要な機能やサービスは採用し、最適な環境にシフトし続けることを常に意識しましょう。
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