モバイル機器の利用、ウェブサービスによる顧客との接点の拡大などにより、システムはその規模と複雑さを増していく一方です。そのうえで、拡大に対応しながら、必要に応じて変更できるフレキシブルなシステムが求められています。そのひとつの解がクラウドの利用です。そこでクラウド利用のメリットのひとつとなる、AWSのElasticsearchについてご紹介します。
改めて知るAWSの Elasticsearch
それでは、まず概要から見てみましょう。
Elasticsearchとは
Elasticsearch とは、オランダのアムステルダムに本社を置くElastic社が開発した検索エンジンです。Googleなど、私たちが慣れ親しんでいる検索エンジンとはやや異なり、全文検索を得意とする「分散型RESTful検索/分析エンジン」です。スケーラビリティに優れ、リアルタイムデータ分析、セキュリティ分析、メトリック、ログ分析などを可能にします。全文検索とは、数値、テキスト、地理情報、構造・非構造化型のあらゆるデータを対象にできるということです。
AWS で利用できるElasticsearch
AWSでもElasticsearchが利用できます。導入も簡単で、運用場面では必要な範囲までスケールすることができます。またElasticsearchを利用するにあたり必要なインフラを意識しなくてもよいマネージド型サービスとして機能を利用できます。
Amazon Elasticsearch Service のメリット
AWSでElasticsearchを使った場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
多様なソースを対象に、リアルタイム検索、分析、可視化を可能に
AWSの特徴は、必要とするシステムを必要なときにすばやく利用開始できることです。AWSで提供されるElasticsearchのサービスも、AWSのマネジメントコンソールからクリックを数回するだけでデプロイできるという簡易なものです。AWSを介さなければ、本来はアプリケーションのインストールとOSなどとの環境設定が求められてしまうでしょう。さらにAWS上ならば、その管理もマネジメントコントロールから集中して行うことができます。オープンソースツールのElasticsearchとAWSサービスが統合されたものという理解になります。
そして運用中は、その処理パフォーマンスや容量に問題が生じても、AWSでコントロールできるため、スケーラビリティに富む、用途や状況に合わせた最適な環境設定が得られることになります。また、AWSがそのメリットとして、システムが継続して利用できる高い可用性を実現していますが、Elasticsearchの利用でもそれが活かされることになります。
主な用途
Amazon Elasticsearch Service は、主に次のような使い方で価値を発揮します。
- ログ分析:対象データを限定されないElasticsearchの検索能力により、ウェブサイトやモバイルデバイス、サーバー等で個々に集められていたデータを同時に収集、分析することができるようになります。各アプリケーションが正常に稼働しているかのモニタリングから、不正活動の検出などのほか、ビッグデータ的な捉え方として、顧客との設定であるウェブサイトへのアクセス状況と問い合わせログデータ、販売データなどとの相関を分析し、デジタルマーケティングに活かすことなどもできます。
- アプリケーションのリアルタイムモニタリング:基幹業務のアプリケーションにオフィスの情報処理用のアプリケーションが加わり、モバイル端末の活用やクラウドサービスによるアプリケーションの導入など、管理対象は広がる一方です。それぞれのパフォーマンスの測定、負荷部分の把握が容易ではなくなる一方で、その診断や劣化の早期発見がますます重要になっています。Amazon Elasticsearch Service は、複雑に入り組むそれらのリアルタイムモニタリングから分析までを、一元管理できます。
- セキュリティ分析:同様に、Elasticsearchの対象を選ばない検索機能とAWSのサービスを組み合わせることで、複数のシステム等のリアルタイム分析を可能にします。使用するアプリケーションの拡大、ウェブサイトやモバイルなど企業外部との接点の増加に合わせ、ネットワークにつながる機器のログを、Elasticsearchで可視化・分析を一元的に行い、セキュリティ強化を図れます。
多様化、複雑化するシステムを管理するにあたり、Elasticsearchのデータリソースを選ばない全文検索機能が、AWS上で現代的な価値を生むことがご理解いただけたと思います。
料金体系でもメリットが多い、Amazon Elasticsearch Service
AWSの料金体系では、利用を始めるにあたり、初期費用や月額基本料がかかりませんが、Amazon Elasticsearch Service の利用についてもそれは同じです。 Elasticsearchの機能をどのシステムやアプリケーションを対象にするか、目的をデータ分析かセキュリティにするかなどが明瞭でなくても、使った分のみの料金なので、安心して運用実績をつけながらの利用範囲の検討ができます。
そして他のAWSサービスと同様に、無料枠を利用できるため、検証で気軽に試すことができます。Amazon Elasticsearch Service で t2.micro.elasticsearch または t3.small.elasticsearch インスタンスを最大750時間/月も利用することができ、Amazon EBSストレージ(マグネティックまたは汎用)を同時に追加で利用することで、10GB/月までを無料枠として利用できます。
無料枠の試用期間が過ぎ、本格的な利用を開始するにあたっては、1年または3年の利用を前提に、全額前払いや一部前払いをすることで、利用料金が優遇されるリザーブドインスタンスの料金体系に移行することもできます。
データの可視化の重要性
データとシステムの活用が広範囲に及ぶようになるほど、それを横断してデータの可視化や分析ができるツールが求められるようになります。その新しいツールにより、ログなどのデータの分析がより迅速になり、システムの監視やセキュリティ管理に必要とされる作業工数や人員を減らすことができます。これがAmazon Elasticsearch Service が、まさに求められる背景と言えるでしょう。Amazon Elasticsearch Service ならば、システムの利用と拡張が行え、その利用量に応じた支払いを基本とする料金体験は、さらに時代にマッチするものと言えるでしょう。
※本記事の内容につきましては2019年5月時点での情報です。
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