アマゾンが提供するAWS(Amazon Web Service)の料金は、使用した分だけの従量制です。使用量が少ない場合は支払いも少なく、逆に使用量が多い場合は支払いも増えます。そのため、「請求額が予測できず不安」という声も聞かれます。
さらに、AWSには2024年1月現在で240種類以上のサービスが存在し、それぞれの料金は使用状況により異なります。そのため、「料金体系が複雑で理解しにくい」と感じる方も少なくないでしょう。この記事では、そういった複雑なAWSの料金体系をわかりやすく解説します。
AWSの導入を社内で検討する際には、料金の見積もりを正確に行い、それを基に稟議を進める必要があります。ぜひ、この記事を参考に、AWSの料金体系の要点を掴んでください。
※本記事内ではAWS公式サイトでドル表示になっている価格を、2024年4月時点の1ドル154円として計算しています。
1. AWS料金はどう決まるか
まずはAWSの料金がどのように決まるのか、AWSについてまだ良く知らないという方にも分かるよう、簡単に解説していきます。
「料金の決まり方は理解している」という方は、「2. ケース別に解説!AWSの料金目安事例」からご覧ください。
1-1. 使用した分だけ料金を払う従量制料金である
AWSの料金は使用した分だけ払う「従量制料金」で、月額固定ではなく月ごとに請求が変動します。水道料金や電気代のようなものと言えば分かりやすいでしょうか。
例えば、AWSのサービスの中で仮想サーバーを構築できる「Amazon EC2」の場合、利用した時間に応じて1秒単位で料金が計算されます。
休日や夜間、サービスを止める場合など、使わない時間帯がある場合は料金が発生しないため、うまく使えば、余計なコストを払う必要がない分、コストを下げることができます。
AWSは従量制料金の「オンデマンドインスタンス」が主流ですが、一定期間継続して利用することを前提に大幅な割引を受けられる「リザーブドインスタンス(RI)」という料金体系もあります。
リザーブドインスタンスについて知りたい方は、「AWSのリザーブドインスタンス(RI)とは?Amazon EC2での料金事例やSavings Plansとの比較も紹介」をご参照ください。
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1-2. 契約するサービスによって料金が変わる
AWSの料金は個々のサービスごとに設定されており、利用するサービスごとに料金が異なります。なお、サービスを組み合わせて利用もできますが、請求額が高額になるため最低限の構成から始めると良いでしょう。
仮想サーバーを構築できる「Amazon EC2」、オブジェクトストレージの「Amazon S3」などが有名ですが、それ以外にも2024年1月時点で240種類を超えるサービスがあります。
例えば、Amazon EC2とAmazon S3の場合で比較すると、以下のように料金が決まる主な要素が異なります。
①インスタンスのタイプ(t2.nanoなど)
②サーバーの台数
③使用したストレージ容量(GB)
④Amazon EC2からインターネットへ送信されたデータ転送量(GB)
①使用したストレージ容量(GB)
②Amazon S3からインターネットへ送信されたデータ転送量(GB)
③読み込み回数(GET/SELECTおよび他のすべてのリクエスト数)
④書き込み回数(PUT/COPY/POSTのリクエスト数)
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1-3. AWSの料金を決める3つの要素
詳細な料金はサービスごとに違うものの、AWSの料金は主に3つの要素によって決まります。その3つとは、①サーバー(コンピューティング)、②ストレージ、③データ転送(アウト)です。
①サーバー(コンピューティング)の料金
コンピューティングとはサーバーの構成のことで、サーバー台数やスペックのことをいいます。
例えばAmazon EC2の場合、CPU、メモリ、ストレージ、ネットワークキャパシティーの組み合わせによってインスタンスタイプが分類されており、インスタンスタイプごとに料金が異なります。
- インスタンスタイプ「t3.nano」:0.0114USD/1時間あたり(1.76円※)
- インスタンスタイプ「m5.xlarge」:0.432USD/1時間あたり(66.81円※)
のように料金が変わります。(リージョン:東京、Windowsの場合)
②ストレージの料金
サーバーを使用した際に使ったストレージの容量に応じて、1GB単位で課金されます。
例えばAmazon S3の場合、
- 最初の 50 TB/月:0.025USD/GB(3.87円※)
- 次の 450 TB/月:0.024USD/GB(3.71円※)
- 500 TB/月以上:0.023USD/GB(3.56円※)
のように料金が設定されています(リージョン:東京、S3 標準の価格)。
③データ転送(アウト)の料金
AWSからインターネットへのデータ転送量に応じて料金がかかります。AWS内の同じデータセンター内のデータ転送と、AWSに向かうデータ転送は無料です。
複数のサービスを使った場合は全体で合算された料金が、毎月の明細書に「AWSデータ転送(アウト)」として表示されます。
Amazon S3 からインターネットへのデータ転送(アウト)は、
- 100 GB まで/月:0.00USD/GB
- 次の 9.999 TB/月:0.114USD/GB(17.63円※)
- 次の 40 TB/月:0.089USD/GB(13.76円※)
- 次の 100 TB/月:0.086USD/GB(13.30円※)
- 150 TB /月より大きい:0.084USD/GB(12.99円※)
のように料金が設定されています(リージョン:東京、S3 標準の価格)。
2. ケース別に解説!AWSの料金目安事例
ここまで述べたように、AWSの料金は使用するサービスやコンピューティング、ストレージ量、データ転送量によって変わります。しかし、そうは言っても、「大体どのくらいになるのか目安が知りたい!」という方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、AWS公式サイトの情報を基に、4つのモデルケースでの月額料金目安を解説します。
【ケース2】Windowsファイルサーバー構築:月額1048.87ドル(約16万円)
【ケース3】社内業務アプリ環境構築:月額2034.70ドル(約31万円)
【ケース4】仮想デスクトップ(VDI)環境:月額321ドル(約5万円)
価格を見てみると「思ったよりも低コストだな」と感じる方も多いのではないでしょうか。
自社で使いたいシーンに近いモデルケースを参考に、料金の相場観を確認してみましょう。
2-1. 動的Webサイト:月額517.26ドル(約8万円)
恒常的にトラフィック増が見込まれる動的WebサイトをAWSで構築する場合の月額料金目安は、月額517.26ドル(79,658円※)です。
このケースでは、それぞれ以下のサービスを選択しています。
・SSL/TLS 証明書:AWS Certificate Manager (ACM)
・Web サーバー:Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)、Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS)
・データベース:Amazon Relational Database Service (Amazon RDS)
引用:AWS ソリューション構成例 – 動的 Web サイト
詳しい料金試算例は、AWS公式の「AWS ソリューション構成例 – 動的 Web サイト」をご覧ください。
2-2. Windowsファイルサーバー構築:月額1048.87ドル(約16万円)
2TB容量のWindowsファイルサーバーをAmazon FSx for Windows File Serverで構築する場合の月額料金目安は、月額1048.87ドル(161,525円※)です。
このケースでは、それぞれ以下のサービスを選択しています。
・アクティブディレクトリサービス:AWS Directory Service
・オンプレミスとの VPN 接続:AWS Site-to-Site VPN
引用:AWS ソリューション構成例 – FSx for Windows File Server による Windows ファイルサーバ
詳しい料金試算例は、AWS公式の「AWS ソリューション構成例 – FSx for Windows File Server による Windows ファイルサーバ」をご覧ください。
2-3. 社内業務アプリ環境構築:月額2034.70 ドル(約31万円)
WindowsアプリケーションをAWSに移行し構築する場合の月額料金目安は、月額2034.70ドル(313,343円※)です。
このケースでは、それぞれ以下のサービスを選択しています。
・SQL Server:Amazon RDS for SQL Server
・ロードバランサー:Elastic Load Balancing
・オンプレミスとの接続:AWS VPN – AWS サイト間 VPN
引用:AWS ソリューション構成例 – Windows Server 社内業務アプリ環境移行
詳しい料金試算例は、AWS公式の「AWS ソリューション構成例 – Windows Server 社内業務アプリ環境移行」をご覧ください。
2-4. 仮想デスクトップ(VDI)環境:月額321ドル(約5万円)
在宅やリモートワークで働く従業員のための仮想デスクトップ環境を整える場合の月額料金目安は、月額321ドル(49,434円※)です。
このケースでは、それぞれ以下のサービスを選択しています。
・仮想デスクトップの認証:AWS Directory Service – AD Connector
・オンプレミスとの接続:AWS VPN – AWS サイト間 VPN
引用:AWS ソリューション構成例 – 仮想デスクトップ (VDI)
詳しい料金試算例は、AWS公式の「AWS ソリューション構成例 – 仮想デスクトップ (VDI)」をご覧ください。
3. AWS料金計算ツールで金額を算出してみよう
2章で紹介した4つの料金事例を見て、大体の相場観が理解できたかと思います。しかし、実際にいくらかかるかどうかは、構成によって変わります。
「AWS Pricing Calculator」という公式の料金計算ツールを使えば、構成やストレージ、データ転送量によって見積もりを作成できます。
詳細な見積もり方法は別の記事で解説していますが、ここでは簡単に公式ツールの使い方を説明します。
①「AWS Pricing Calculator」にアクセスする
②見積もりたいサービス(例えばAmazon EC2)を選択する
③リージョン(例えば東京)と、見積もり方法(クイック見積りか高度な見積りを選択する
④EC2インスタンスを実行するOS(例えばLinux)を選択する
⑤毎月のワークロードや必要なインスタンス台数(例えば1台)を設定する
⑥vCPUの数、メモリ容量などを基に、インスタンスタイプ(例えばt3.small)を選択する
⑦価格戦略(例えばオンデマンドインスタンス)を選択する
⑧ストレージ量(GB)を入力する
⑨データ転送量(GB/月)を入力する
⑩見積もり結果の金額が表示される
見積もりはサービスごとに行い、複数のサービスを合算することもできます。また、共有可能なリンクを生成して、見積もり結果を第三者に送る機能もあります。
詳しい見積もり方法を知りたい方は、「AWSコストを見積もりたい!公式ツール&ざっくりAWSの使い方」をご覧ください。
4. AWSの料金に関わるQ&A
ここからは、AWSの料金で多くの方が疑問を持つ点について、回答していきます。
4-1. AWSの料金は日本円でも払えるの?
AWSの価格表を見ると全てUSドル表記で書かれていますが、日本円での支払いも可能です。ただし初期設定ではUSドルでの支払いとなっているため、管理画面で円払いに切り替える必要があります。
切り替えの手順を簡単に紹介します。
②左側にある「お支払い方法」を選択
③クレジットカード情報の「お支払通貨の設定」で「USD」となっている場所をクリック
④プルダウンリストから「JPY」を選択
⑤切り替え設定を行った月のAWS利用分から反映される
4-2. AWSの料金は請求書払いできる?
AWSが公式に用意している支払方法は、クレジットカード決済が基本です。AWSの料金を請求書払いにすることは可能ですが、いくつか条件や注意事項があります。
・PDFによる電子送付で、紙での請求書発行は行っていない
・銀行口座振込は米ドル決済、かつ海外送金
・送金手数料はユーザー負担となる
請求書払いにできたとしても、日本円建てでの決済ができないという大きなデメリットがあります。(クレジット払いの日本円建て払いは可能。)
しかし、AWSパートナー企業が提供している「請求代行サービス」を使えば、日本円建てでの請求書払いが可能です。
例えば弊社の「AWSリセールサービス」では、請求代行手数料無料で、AWSに代わって日本円建ての請求書払いができます。さらに、AWSを割引価格で利用でき、AWS技術サポートも無料というお得なサービスとなっております。
4-3. AWSの料金はもっと安くなるって本当?
AWSの料金は定期的に値下げしており、今後もITコストの低下に伴って料金が安くなる見込みです。
実際、AWSでは過去10年間で70回を超える値下げが行われています。AWSを多くの人が使えば使うほど、これからも料金が安くなっていくことが期待できます。
値下げは自動で行われるため、使っているうちに気付いたら単価が下がっていく仕組みです。
5. AWSの料金を削減する方法
初期費用がかからず使った分だけ支払うことで、低価格を実現しているAWS。しかし、実はもっとコストを下げる方法があります。
知らなければ損してしまう情報なので、しっかり理解していきましょう。
5-1. リザーブドインスタンスを活用する
リザーブドインスタンス(RI)は、前もって1年分または3年分の予約をして金額を支払うことで、大幅な割引価格が適用される仕組みです。
例えばAmazon EC2の場合は、リザーブドインスタンスで最大72%割引になります。
ただし、リザーブドインスタンスが利用できるサービスは、Amazon EC2やAmazon RDSなど特定のサービスに限定されています。
上手く活用すればかなりのコストカットになるため、リザーブドインスタンスの成約などを理解したうえで、導入を検討してみましょう。
リザーブドインスタンスの成約や計算例など、さらに詳しく理解したい方は、「AWSのリザーブドインスタンス(RI)とは?Amazon EC2での料金事例やSavings Plansとの比較も紹介」をご参照ください。
5-2. 不要なインスタンスやリソースを停止する
AWSの利用状況を定期的に確認することで、さらにAWS料金を下げ、最適化することができます。
AWSを利用していく中で、不要なインスタンスや開発環境が増えていってしまうことがあります。
例えば、
- 開発環境やテスト環境など、本番環境以外で実行されているワークロードがある
- 夜間や休日など、利用していない時間帯のAmazon EC2やAmazon RDS費用を払っている
- 使っていないAmazon Redshift クラスターがある
などです。
こうした無駄なコストをチェックして、不要なものは停止や削除することで、料金を削減できます。
5-3. AWS料金が割引になるサービスを利用する
構成や支払い方法の変更を行わなくても、手軽にAWSの料金を削減できるサービスがあります。それが、AWSのパートナー企業が提供する「AWS請求代行サービス」を利用することです。
このサービスを利用すると、AWSの全サービスで一律10%割引の割引が可能です。
なぜAWS料金を割引できるかというと、たくさんのお客様のAWS利用料をまとめてサービス会社が払うことで、ボリュームディスカウントが適用されているからです。その差額を、お客様に還元しています。
さらにこのサービスを使えば、AWS公式では難しい日本円建ての請求書払いも可能です。
当社 NHN テコラスのAWSリセール(請求代行)サービスの導入を検討されるお客様に向けて、社内の企画書や稟議書などで利用できる文例や画像素材をテンプレートとしてまとめた 資料集をご用意しています。お客様の導入背景や事情にあわせて文例をご調整の上、ご活用いただけると幸いです。
この記事では、
- AWSの料金が決まる仕組み
- ケースごとにAWS料金の目安を解説
- AWS見積ツールで料金を算出する方法
- AWS料金はさらに削減できる
を解説しました。AWSの料金の仕組みやだいたいの相場観を理解できたのではないでしょうか。
AWSの料金は、使うサービスや構成によって細かく料金が決められているため、AWS公式の料金計算ツールを使って正しく見積もりを計算したうえで導入することをおすすめします。
詳しい見積もり方法を「AWSコストを見積もりたい!公式ツールの使い方」でキャプチャ画面付きで解説していますので、ぜひご覧ください。
また、「少しでもAWS料金を安くしたい」「日本円で請求書払いにしたい」などの要望をお持ちの方は、ぜひNHNテコラスにご相談いただければ、詳しい資料をお渡しさせていただきます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
AWSの利用料が安くなる以外にも特典がある!
AWS請求代行リセールサービスはパートナー企業によって手数料、割引率、特典などサービス内容はさまざまです。他社と比較してどのような特典やメリットがあるのかをご紹介します。