AWSは、世界中で利用されているクラウドコンピューティングサービスです。AWSでは、利用した時間単位で課金される、「オンデマンドインスタンス」が主流となっています。
一方、1年、3年という長期利用することで利用料が割引になる「リザーブドインスタンス」も、近年では人気です。しかし、リザーブドインスタンスでは割引が受けられるとわかっているものの、料金体系が複雑に感じられるため、導入を見送るケースもあります。
今回は、AWSのリザーブドインスタンスとは何か、活用事例も交えて解説します。2019年11月にリリースされたSavings Plansの概要や、どちらの方がお得になるかも解説するため、導入を検討している場合は参考にしてください。
AWSリザーブドインスタンス(RI)とは
AWSリザーブドインスタンス(RI)とは、一定期間継続して利用することを前提に、大幅な割引を受けられるサービスのことです。
特定のインスタンスを割引するものではなく、インスタンスのスペックなどを指定することでその指定に合致するインスタンスに自動的に割引が適用されます。例えば「t3.large 1台分の枠を1年間押さえる」という形になります。1年または3年の契約となり、契約年数に応じて割引率が設定されるシステムです。なお割引率は、インスタンスの種類や支払い形態に応じて変化します。
2020年7月現在の対象は6サービスとなりますが、サービスにより名称や仕様が異なります。
- リザーブドインスタンス:Amazon EC2 /Amazon RDS /Amazon ElasticSearch Service
- リザーブドキャッシュノード:Amazon ElastiCache
- リザーブドキャパシティ:AmazonDynamoDB
- リザーブドノード:Amazon Redshift
以降は、主にAmazon EC2のリザーブドインスタンスを中心に解説を行なっていきます。
Amazon EC2のリザーブドインスタンスの種類
よく利用されるAmazon EC2のリザーブドインスタンスには、以下の2種類があります。
- スタンダード
スタンダードでは、別のインスタンスファミリーに変更することができません。ただし、割引率は最も高い種類で最大72%割引となります。 - コンバーティブル
コンバーティブルでは、作成時の価格と同等以上のものであれば、インスタンスの変更ができます。スタンダードよりは、割引率が低い種類となります。
それぞれの特徴を考慮して、種類を選択しましょう。
AWSリザーブドインスタンスの活用方法と特徴
リザーブドインスタンスは利用料が割引になるお得なサービスですが、契約期間が長い分購入したインスタンスを使わなくなっても課金されるというリスクもあります。どのように活用すればリスクを少なく、割引を享受できるのでしょうか。
上図のように、AWSではアクセス数にあわせてインスタンスの増減があります。常時稼働しているインスタンスをリザーブドインスタンスに置き換え、ピーク時での増減をオンデマンドインスタンスで賄うことで少ないリスクで割引を享受できます。
AWSリザーブドインスタンスの主な特徴は、以下の通りです。
1年 / 3年で購入できる
契約期間は、1年もしくは3年のどちらかです。3年間契約の場合、1年間契約よりも多くの割引が受けられます。ただし、購入後のキャンセルはできないため、長期的な利用計画を立てておきましょう。はじめて利用する場合には1年契約での利用がリスクが少なくオススメです。
大幅に割引される
AWSリザーブドインスタンスは、オンデマンドインスタンスと比較した場合、最大で72%の割引を受けることが可能です。例えば一番割引率の低いスタンダードで1年の契約でも、東京リージョンで前払いなしでa1.xlargeを利用した場合、オンデマンドと比較して37%の削減が可能なため、少ないリスクでコスト削減が可能になります。
支払いパターンが3種類ある
支払いパターンは、「全て前払い・一部前払い・前払いなし」の3種類です。割引率は、全て前払いが最も高く、次点で一部前払い、次に前払いなしとなります。3種類の支払いパターンから自社に適した支払いパターンを選ぶことが可能です。
なお、AWSパートナーが提供する請求代行リセールサービスを使うことでも、AWSと直接契約するより費用が割引されて安くなります。<マンガでわかる>AWSリセールサービスの資料では、なぜAWS料金が安くなるのか?どんなメリットがあるのか?マンガでわかりやすくリセールサービスを解説しています。
AWSリザーブドインスタンス契約時の注意点
AWSリザーブドインスタンスを契約する場合、2つの注意点があります。
課金体系が変わる
稼働していない場合でも、契約期間中は料金が請求される。
柔軟性が無くなる
インスタンスタイプを指定して購入するため、指定範囲外のタイプへのスペックなどの変更ができなくなる。
なお指定には、リージョン、インスタンスファミリー、インスタンスタイプ、テナンシー、OS、アベイラビリティーゾーンが含まれます。これらを指定して購入するため、他のインスタンスやリージョンに対してAWSリザーブドインスタンスを適用したい場合、新規に購入する必要があります。
AWSリザーブドインスタンスの計算例
Amazon EC2 a1.xlarge 1台の場合
Amazon EC2 a1.xlarge 1台を3年契約で利用する場合、3年間にかかるコストは、約3,383ドルとなります。一方、リザーブドインスタンス(全額前払い3年)の場合、3年間にかかるコストは約1,269ドルです。
結果として、約3,383ドル – 約1,269ドル = 約2,100ドル(62%)の節約が可能です。
Savings Plans の特徴と、リザーブドインスタンスとの比較
Savings Plansとは?
Savings Plansは、2019年11月に発表された新しい割引料金モデルです。リザーブドインスタンスと同様、1年 / 3年の利用を約束することで、最大72%の割引が受けられます。ただ、利用できるサービスはリザーブドインスタンスと異なります。Savings Plansの対象には、2020年7月時点でAmazon EC2とFargateおよびAWS Lambdaの3種類があります。また、Savings Plansのプランは、以下の2種類です。以降は主にAmazon EC2でSavings Plansを利用する際の解説となります。
- Compute Savings Plans
全リージョンのAmazon EC2の時間あたりの利用金額を割引(最大66%) - EC2 Instance Savings Plans
各リージョンのAmazon EC2インスタンスの時間当たりの合計利用額を割引(最大72%)
Savings Plansでは、どちらのプランでもアベイラビリティーゾーンの指定が不要、インスタンスタイプの指定が不要で、Compute Savings Plansの場合、さらにリージョンやインスタンスファミリーの指定も不要になるなど、リザーブドインスタンスと比較して、高い柔軟性があります。またリザーブドインスタンスと異なり、稼働しているインスタンスの合計金額に対しての適用となります。
Savings Plansとリサーブドインスタンスの比較表
Savings Plans | リザーブドインスタンス | ||||
Compute | EC2 Instance | Convertible | Standard | ||
割引率 | 最大66% | 最大72% | 最大66% | 最大72% | |
Amazon EC2の購入時に指定が必要なカテゴリ※1 | – | リージョン インスタンスファミリー |
リージョン インスタンスファミリー インスタンスタイプ テナンシー OS ※2 |
||
利用料の選択方法 | 1時間あたりの利用料をユーザーが指定 →稼働しているインスタンスの合計金額に割引適用 |
リストから選択 →稼働しているインスタンスに割引適用 |
|||
適用サービス | Amazon EC2 AWS Fargate AWS Lambda |
Amazon EC2 | Amazon EC2 | Amazon EC2 Amazon RDS Amazon Redshift Amazon ElastiCache Amazon Elasticsearch Service |
※1 Reserved InstanceでAmazon EC2以外を購入する場合には指定が必要なカテゴリが異なる
※2 Convertibleは利用料の差額を払う形でインスタンスファミリー・タイプ、OS、テナンシーの変更が可能
Savings Plans の計算例
Savings Plansに関して、Amazon EC2 a1.xlarge 1台を、3年間契約した場合を紹介します。
例) Amazon EC2 a1.xlarge 1台を3年間契約した場合のコスト | |
オンデマンドインスタンス | 約3,383ドル |
---|---|
Savings Plansの場合(全額前払い3年) | 約2,044ドル |
リザーブドインスタンス(全額前払い3年) | 約1,269ドル |
上記の表では、Savings Plansよりもリザーブドインスタンスが安くなっています。しかし、先述したようにSavings Plansは柔軟性が高いため、初めて利用する場合にはリスクが少なくオススメとなります。
またリザーブドインスタンスとSavings Plansを併用して利用した場合には、適用される割引範囲のせまいリザーブドインスタンスがまず優先され、割引に無駄がでないようになっています。
今回は、AWSのリザーブドインスタンスの概要や、Savings Plansとの比較を中心に解説しました。
リザーブドインスタンスにはいくつか制約があるものの、利用料金を削減できるメリットがあります。しっかりと管理できれば、大きなコストダウンを実現できるでしょう。また、初めて利用する場合は、システム構成が変わる場合も柔軟に対応できる、Savings Plansもおすすめです。
現在AWSでサーバ運用を行なっている場合、条件があうインスタンスがある可能性は大いにあります。本記事を参考に、リザーブドインスタンスおよびSavings Plansについてきちんと把握して、是非コストダウンを検討してみてください。
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