AWSではサーバーの移行を行うサービスにAWS Server Migration Service(SMS)とCloudEndure Migrationの2つが用意されています。本記事では2つのサービスの特長と比較、どのように使い分ければいいのかをご紹介します。
AWS Server Migration Service(SMS)とは
エージェントレス型の仮想マシンの移行を行うサービスでVMware、Hyper-Vの仮想マシンを移行できます。エージェントレス型のため、本番稼働中のサーバーに影響を与えず移行ができることが最大の特長です。
また仮想マシンに対する増分変更をキャプチャし自動転送を行え、ストレージサービスであるAmazon S3へ仮想マシンのイメージをそのまま移行できます。
CloudEndure Migrationとは
CloudEndure社をAWSが買収したことにより2019年6月からAWSで無料で利用ができるようになったサービスです。OSごとにエージェントを導入すれば、物理・仮想マシン、どちらの移行もできます。移行先のサーバーにそのままデータを移行でき、切り替えを行うだけで移行が完了するため、最短のダウンタイムで移行できることが特長です。
またデータ転送ではAWS Direct Connectを利用することができ、移行時のネットワーク帯域の制御も行えます。
AWS SMSとCloudEndure Migrationの比較
どちらのサービスも90日間無料で利用ができますが、転送先の費用を負担する必要があります。
AWS SMS | CloudEndure Migration | |
---|---|---|
エージェントのインストール | なし | あり(OSごと) |
同時実行VM数 | 最大50VM | 制限なし |
ダウンタイム | あり | ニアゼロ |
ネットワーク帯域の制御 | できない | できる |
AWS Direct Connectの利用 | できない | できる |
データ転送先 | Amazon S3 | 移行先のサーバー |
AWS SMSとCloudEndure Migrationの使い分け
稼働中の本番サーバーにエージェントをいれることができない場合や、稼働中のサーバー台数が多い場合には手軽に移行を行えるAWS SMSの利用がオススメです。ただし移行の切り替え時にはAmazon S3からサーバーのマシンイメージを読み込む時間が必要となるため、ある程度のダウンタイムを許容する必要があります。エージェントをいれることができればCloudEndure Migrationは移行時の台数制限がなく、ネットワーク帯域の負担を制御できるためオススメです。CloudEndure Migrationは移行先のサーバーへデータを転送するため、Amazon S3に転送を行うAWS SMSのほうが費用を抑えての移行が可能です。
小規模な移行にはAWS SMS、ミッションクリティカルなシステム移行はCloudEndure Migrationと使い分けられることが多いです。
また2つのサービスの大きな違いとしてはネットワークの制御の有無もあります。AWS SMSはネットワークの制御ができないため稼働中の本番環境のネットワーク帯域を圧迫するリスクがあります。ネットワークの制御を行いたい場合はCloudEndure Migrationを利用しますが、マシンイメージの容量が大きく転送時間を圧縮したい場合には、ハードウェアアプライアンスによるオンプレミスからクラウドへの大量のデータを移行するサービスであるAWS Snowballを利用することも選択の1つです。
AWSではその他にもデータベースの移行サービスなど、AWSへの移行を補助する様々なサービスを提供しています。それぞれの移行サービスのメリット・デメリットを理解したうえで自社の移行戦略にあわせて適切なツールを活用しましょう。