Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスAWSとは?メリットやデメリット、そしてAWSを使って何ができるのかについて初心者に向けてわかりやすく解説します。
AWSサービスについて知りたい方、これからAWSの導入を検討される方は是非ご一読ください。
AWSとは?
AWS(Amazon Web Services:アマゾンウェブサービス 以下AWS)とは、Amazon Web Services, Incが提供している多数のクラウドコンピューティングサービスの総称です。
AWSは世界中のデータセンターから200以上のサービスを提供しています。企業や個人はインターネットを介してこれらのサービスから必要な機能を組み合わせて自分の使いたいサービスを作り、オンデマンドで利用できます。
具体的には以下のようなサービスが利用できます。
・仮想サーバーの作成
・データのバックアップ保存
・データベース運用
・ウェブサイト運用
・システム開発環境の構築
・ビックデータの解析
・AI(機械学習)機能
・動画、画像データなどのコンテンツ配信
AWSの代表的なサービスについては後の項目でご紹介します。
AWSの成り立ち
AWSはもともとECサイトのAmazonが膨大な商品管理やデータ分析などさまざまな課題を解決するために考え出されたITインフラの仕組みやノウハウの一部を2006年一般向けにサービスとして公開したことからはじまりました。
まだ「クラウドコンピューティング」という言葉が世に広まる前のことです。
圧倒的な世界シェアを誇るAWS
クラウドコンピューティングサービスの先駆けとなったAWSは、現在、世界での売上でトップシェアクラスのユーザー数を誇ります。米調査会社のガートナーの2020年8月の発表では、2019年の世界シェアは45%もあり、AWSは世界で最も使われるクラウドコンピューティングサービスとなっています。
出典:Gartner Says Worldwide IaaS Public Cloud Services Market Grew 37.3% in 2019
AWSとオンプレミスとの違い
オンプレミスとAWSの違いは、システムを自社運用するか外部運用するかの違いです。
かつて、企業は自社システムが必要となった場合、自社ビル内、もしくは電源や空調、耐震設備の整ったデータセンターの一区画を借りて、物理サーバーやネットワーク機器をリースもしくは購入しソフトウェアなど必要なシステムを調達して自社運用していました。このサーバー環境はオンプレミスと呼ばれ一般的でしたが、実際にシステムが稼働するまで、多大な労力と先行投資が必要でした。
AWSはインターネットを経由して利用できる外部のクラウドコンピューティングサービスです。自社でサーバーを購入する、サーバーの搬入を待つ、サーバーを管理する必要がなくなり、インターネットにつながるPCがあれば、数分でインターネット上に仮想のサーバーを作成し、システム構築を開始することができます。
企業はサーバー機器を設置する場所を考える必要もなく、サーバー機器も保有しません。使わないときは不要なリソースを停止または削除することでサービス提供元のAWSにITリソースを返却し、課金を停止します。
AWSの料金体系
料金体系はサービスにより異なり、利用するサービスごとに料金が必要になります。いくつものサービスを組み合わせて利用すると、請求額が高価になることもあるので注意が必要です。最初は必要最低限の構成からはじめることをおすすめします。AWSには公式の見積もりツールが提供されているので、申し込む前に利用額を見積もることも可能です。
ご参考:AWS料金の見積もり方法|公式ツールAWS Pricing Calculatorの使い方
従量課金
AWSは月額ではなく従量課金制なので、利用量によって月ごとに価格が変動します。データ送信にはデータ転送料金もかかるので、アクセスが増えたときには注意が必要です。Amazon EC2、Amazon RDS、Amazon S3など、いくつかのサービスは、一定の容量を1年間無料で試すことができます。無料期間でいろいろなパターンを試し、必要な量を見積もると安心です。
ご参考:AWS料金はどう決まる?料金が決まる仕組みとケース別の目安を解説
また、AWSには一定額の利用を超えるとアラートを発生させる機能があり、設定しておくと予期せぬ請求発生にも早めに気づけるのでおすすめです。

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AWSを使う5つのメリット
AWSには、次のようなメリットがあります。
サイジングからの解放
オンプレミスの場合、システム導入時にピーク時の負荷を想定して設計する場合が多く、常に余剰リソースを抱えながらの運用となりますが、AWSでは、数分でサーバー台数の増減、また、稼働しているサーバーのCPUやメモリ、ストレージの変更ができます。さらにはキャンペーンやメディア連動による予期せぬピーク時でも一定のしきい値を超過した場合に自動でサーバーリソースを増強する仕組みを作ることができるため、常に余剰リソースを抱える必要がなくなり、同時にリソース不足によるビジネスの機会損失を防ぐこともできます。
低コスト・継続的な値下げ
AWSの料金はサービスにより異なりますが、基本的には秒単位、もしくは時間単位の従量制で、月毎に支払います。必要な時にサービスを立ち上げて、不要になったらサービスを停止し、データを削除することで課金は停止します。また、初期費用は無料で月額の基本料金もかからないので、初期導入にかかるコストを削減できます。
AWSは2006年のサービス開始以降、109回以上の継続的な値下げを行ってきました。
多くのお客様がサービスを利用するスケールメリットによって、インフラの維持コストが削減され、技術投資やサービスの最適化を行って全体的なコストを継続的に下げ続けることができています。AWSはコストが下がった分、値下げとして顧客に還元しています。
災害に強い可用性と信頼性の高さ
AWSには、世界中に分散された25のリージョンがあり、その中に地理的に離れたデータセンター群であるアベイラビリティーゾーンがあります。アベイラビリティーゾーンは世界で81箇所あり、日本では、東京と大阪にリージョンが設置され、アベイラビリティーゾーンは東京リージョンに4つ、大阪リージョンに3つあります。物理的にも論理的にも独立した空間を用意することで、1つのインスタンスにトラブルがあっても、他のインスタンスには波及しません。そのため、高い可用性を求められる運用の設計要件にも対応できます。
工数を削減できる
AWSが提供しているインフラ部分のセットアップや運用は、AWSが行うため、オンプレミスに比べるとはるかに工数を削減できます。ユーザーはインフラを利用して本来の目的を達成するためのアプリケーション開発などの作業に集中できます。ただし、AWSのサービスにインストールしたOSやミドルウェア、ユーザーが開発したアプリケーションなどは、ユーザー側で管理しなくてはなりません。
最先端技術をいつでも利用できる
AWSは、機械学習、ロボット工学、量子テクノロジー、人工衛星などの最先端技術を含む200を超えるサービスを提供しており、2020年には2,757回のバージョンアップや機能改修などのアップデートが行われています。AWSの90%以上のサービス、機能はお客様からのリクエストを元に実装されています。企業が必要とする機能はひととおり揃えられており、他社のサービスを組み合わせることなくAWSのみで完結させることができます。
AWSのデメリット・注意点
AWSのデメリットや利用する際の注意点について見ていきましょう。
独自カスタマイズの自由度が低い
AWSはオンプレミス環境に比べてカスタマイズできる範囲に制約があります。AWSのみではユーザーの実現したい機能を実現できない場合も出てくる可能性があります。
導入の際には、必要な機能を精査し、AWSが提供するサービス・機能で既存システムの統合が可能か確認しておく必要があります。
AWSサービスの組み合わせに知識が必要
AWSでは多数のサービスが提供されており、さらには常にサービス開発を行っているため、次々と新しいサービスが増えています。また、サービスの中でも似たものもあり、全てのサービスを把握するのはなかなか難しい状況です。
AWSサービスの知識が少ない場合、実現したいシステムのために何をどう組み合わせればよいのか適切な判断がしづらいというマイナス面があげられます。
AWSを利用していくにはサービスについての詳細をある程度把握する必要があります。
サービスの組み合わせについてはAWSパートナーに相談することも可能です。
AWSコンサルティング・技術支援サービス
変動するコストにより予算が立てにくい
AWSは利用した分のみ費用が発生する仕組みのため、無駄な費用を抑える効果がある一方、毎月の費用は一定ではなく、サービス導入からランニングコストまでの試算が難しいという問題が発生します。
バックアップや死活監視、セキュリティはユーザーが行う
出典:AWSの責任共有モデル
AWSを利用するときには「責任共有モデル」を理解する必要があります。これは、AWSとユーザーが責任範囲を分担するという考え方です。AWSが提供するサービスはハードウェア、コンピューティングなど、クラウド本体のインフラ部分のみです。
ユーザーが構築するOSとアプリケーション、さらにそこで利用されるデータについては、ユーザーの保守範囲となります。
AWSはバックアップや死活監視、セキュリティ用のサービスも提供しているので、ユーザーがそれらを組み合わせて利用するのが一般的ですが、例えば、ユーザーが作成した仮想サーバー上に問題が発生した場合には、やはり自身で対処するため、ある程度のインフラの専門知識を持つ人材の確保が必要です。
ユーザー側での対応が難しい場合には、AWSパートナーから提供される運用代行サービスを利用する方法もあります。
AWSの運用代行サービス
AWSで何ができる?初心者にもわかりやすく代表的なサービスを解説
AWSでは、2021年3月時点で200ものサービスが提供されており、インフラストラクチャサービスとプラットフォームサービスの2つに分かれています。
インフラストラクチャサービスに含まれるのはコンピューティング、ストレージ、コンテンツ配信、データベース、ネットワーク、セキュリティなどです。プラットフォームサービスには分析、アプリケーションサービス、開発者用ツール、管理ツール、モバイルサービスなどが含まれます。また、それぞれの分野でさらに細かいサービスが提供されています。
ウェブサイト構築・運用
使うサービス:Amazon EC2、Amazon Lightsailなど
「Amazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)」はAWSで汎用的に利用される仮想サーバーのサービスで、サーバーを構築し運用できます。WindowsやLinuxなどのOSが自由に選べる、CPUのCore数やメモリ容量を状況に応じて選択・変更できる、複数の仮想サーバーを作り冗長化するなど、幅広いカスタマイズが可能です。管理画面上の操作だけで、数分でサーバー構築が完了します。
「Amazon Lightsail」はVPSサービスで、Amazon EC2より自由度は下がりますが、手軽に利用できます。さまざまなテンプレートが用意されており、ウェブサイトをWordPressなどのアプリケーションを利用して簡単に作れます。
データのバックアップ・災害対策
使うサービス:Amazon S3
「Amazon S3(Amazon Simple Storage Service)」は、オンラインストレージサービスの一つです。高い拡張性・耐久性、可用性や低コストなどの特長からバックアップや災害対策用のデータ保管庫、アーカイブ、コンテンツ配信、データの分析用のデータレイクなどにも活用できます。保管されるデータは最低3つのアベイラビリティーゾーンに自動的に複製して保存されるため耐久性が高く、どれか1つに障害が発生しても使い続けることができます。
ビッグデータの蓄積・分析・運用
使うサービス:Amazon EMR、Amazon Redshift、Amazon Kinesisなど
企業が扱う膨大な量のデータ(顧客情報やIoTデータなど)の蓄積、分析、運用をいくつかのサービスと組み合わせて実現できます。
「Amazon EMR」はビッグデータのクラウドプラットフォームで、Apache Spark、Hive、Prestoなどのフレームワークを利用したデータ解析が可能です。Amazon S3などにデータを保存し、Amazon EMRと連携することでオンプレミスと比べ、解析環境を効率よく構築できます。
ほかには、データウェアハウスサービス「Amazon Redshift」やストリーミングデータをリアルタイムに分析が可能な「Amazon Kinesis」などがあります。
ご参考:AWSのデータ分析機能の使い方と成功事例
基幹・業務システムの構築・運用
AWSは社内の基幹・業務システム(顧客管理や販売管理、人事給与、会計システム)の構築にも活用できます。これら基幹、業務システムをAWSに移行することで、ハードウェア機器増強などのサイジング作業やセキュリティアップデート作業、ハードウェア障害対応などのインフラの運用負担を軽減できるメリットがあります。
AWS以外のクラウドサービスとは
AWSは、クラウドコンピューティング市場で世界シェア1位ですが、世界シェア2位にはMicrosoft社が提供する「Azure」、世界シェア3位にはGoogle社が提供する「Google Cloud Platform(GCP)」と続いています。それぞれ特長をあげていきます。
Azure
AzureはMicrosoftが提供しているため、Microsoft社製品との親和性が高くWindows Server の移管先に向いています。Office365や、Active DirectoryなどのMicrosoft系ツールとの連携もしやすいのがメリットとなります。
Google Cloud Platform(GCP)
GCPはGoogleが提供しており、検索、Gmail、Googleマップ など世界中に提供するサービスの基盤としても運用実績があります。Googleが提供するサービスと連携が取れることや、AI開発、データ分析にむいていて、効率的な運用が可能です。サービス利用者には、オンライン学習コースが用意されており、無料、かつ日本語なので、初心者でも使いやすいサービスです。
AWSサービスのメリットを最大限引き出すために
200ものサービスを提供しているAWSは、さまざまな使い方ができます。そのため、ユーザーが明確に目的をもち、何をしたいのかを決断しない場合、どう使えばいいかがわかりません。具体的に使い方を考えてから、それに合わせて必要なAWSのサービスを選択しましょう。適切なサービスを選択するためには、AWSについてもより正しく理解する必要があります。AWSを使いこなすための学習コストを高いと感じる場合や、人材が不足しているようであればAWSのパートナーに相談する方法もあります。
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