企業のITインフラとしてクラウドサービスを導入する企業が増えるにつれ、クラウド上にあるITインフラの運用管理を代行するマネージドサービスプロバイダー(MSP)を利用する企業も増えてきました。MSPは、自社で運用管理を行う場合と比較してどのようなメリット/デメリットがあるのでしょうか。MSPが選ばれる理由や導入効果も含めて明らかにします。
MSPが求められている背景とは?
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する施策の一つとして、ITインフラをパブリッククラウドへ移行・構築する企業が増えています。そうしたクラウドサービスを利用する企業の中には、運用管理の方法・手順に戸惑い、課題と感じているところも少なくありません。
さらに、パブリッククラウドに移行したあとにも大きな課題が残ります。それは、AIやクラウドの知識を持つ先端IT人材の不足です。経済産業省の調査(※1)によると、2030年にはIT人材全体の不足数が最大で約79万人になるという試算が出ています。この内の約74万人は先端IT人材と位置付けられ、オンプレミスなどを扱う従来型 IT 人材とは区別されています。この調査から、多くの企業でクラウドの知識を持つIT人材の育成・採用に課題を抱えている、もしくは将来的に人材不足に陥ることが予想できます。
このような課題を抱える企業を中心に導入の機運が高まっているのが、マネージドサービスプロバイダー(MSP)が提供するクラウド運用監視サービスです。MSPとは、企業のITインフラの運用管理や保守メンテナンスを代行するアウトソーシングサービス事業者のことです。MSPはサーバーやネットワークなどITインフラ全体の稼働状況を24時間365日体制で監視し、トラブルが発生した際の原因調査・復旧、OS/ミドルウェアのアップデートやインフラ面での課題解決などのサービスを提供しています。
MSPのメリットとデメリット
MSPは自社運用と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか。最大のメリットと言えるのは、情報システム部門の人的リソース不足を補完できることです。
24時間365日稼働するクラウド上のITインフラの監視を行うには、休日や夜間を問わずに対応でき、かつクラウドの知見を持つ人材を確保しなければなりません。監視などの定常業務や保守メンテナンスに人的リソースが割かれると、情報システム部門が取り組むべき全社のDX推進や情報戦略立案、アプリケーションやサービスの企画・開発といった本来の業務に注力することも難しくなります。これに対しMSPを利用すれば、人的リソースの課題を解決することが可能になります。情報システム部門はITインフラの監視や障害対応といった業務から解放され、本来の業務に専念できるようになるわけです。
またMSPには、ITインフラの可用性向上や障害復旧の迅速化を実現するというメリットもあります。常時監視の体制が用意できなければ、休日や夜間にトラブルが発生してもすぐに対応できず、ビジネスに支障を来たすことも考えられます。24時間365日の対応が可能なMSPに任せることで、深夜・休日などの障害発生時間にかかわらず迅速な対応が可能になり、結果的にITインフラの可用性向上につながります。
さらにMSPによっては、ITインフラだけでなく業界・業種に関する知見や最新クラウド技術に関するベストプラクティスに精通した事業者もあります。こうしたMSPを選択すれば、自社の情報システム戦略強化にも役立ちます。
ただし、MSPに頼りすぎるのも禁物です。MSPの適用範囲を広げれば広げるほど、自社の情報システム部門の管理能力が低下するリスクも高まります。また、運用管理に関するナレッジやノウハウが蓄積しづらいというデメリットがあるほか、MSPに任せているうちに、気付いたらITインフラが特定のベンダーやサービス事業者に依存してしまう、いわゆる「ロックイン」に陥ってしまうことも考えられます。
もう一つ、留意すべき点は「コスト」です。MSPを利用するにはどうしてもそれなりのコスト負担を強いられ、投資対効果の捉え方によっては「高い」と感じることもあります。コストについてはMSPから提供されるサービス内容を改めて見直し、万一MSPのサービスが提供されなければどうなるのか、障害復旧のスピードや事業継続性の観点から試算してみるとよいでしょう。
クラウド運用にMSPが最適なワケ
自社運用に比較してメリットの多いMSPですが、オンプレミス環境の運用管理が通用しないクラウドサービスでは、とくに有効性が高いと言えます。
たとえば日本国内のパブリッククラウドサービスでトップシェアを誇るAmazon Web Services(AWS)では、ITインフラの稼働基盤として多く採用されているIaaSの「Amazon Elastic Computer Cloud(Amazon EC2)」を利用するときに、仮想サーバーインスタンスやストレージの設定からアプリケーションのインストールまでの構築・運用を自分たちで行う必要があります。この構築・運用作業は、ベストプラクティスに沿った特有のノウハウが求められるので、処理負荷に最適なインスタンスを選んでストレスなく運用するには試行錯誤を繰り返し、ノウハウを蓄積しなければなりません。
また、こうしたノウハウを得るために社内でクラウドの知識をもつ先端IT人材を育成しようとしても、クラウドはサービスや機能の追加・アップデートが早いため、それを習得するまでの学習コストがおのずと高くなります。サービスアップデートについてAWSで例えると、2018年は機能拡張が1957回あり、サービス数は2021年3月時点で200個と、年々数を増やしています。情報システム部門がこれらのノウハウを手に入れるには、かなりの時間と手間がかかることが容易に想像できるでしょう。また採用については冒頭で述べたように、先端IT人材の採用は人材不足のため困難が予想されます。
こうした事態を避けるのに役立つのが、MSPなのです。とりわけ、AWSに特化したソリューションを提供しているMSPを選べば、システムの稼働監視だけでなくインスタンスの最適なサイジングやチューニング、コストの最適化などにも対応してくれます。自社の情報システム部門がノウハウを蓄積する時間や手間をかけるのであれば、AWSを得意とするMSPと契約することで、負担を軽減しながらクラウドのメリットを最大限に引き出せるようになります。
NHNテコラスが提供するMSPの強みとは?
前述したように、AWSをはじめとしたクラウドの普及に伴い、監視だけでなく、企業のDXを推進するためのクラウドジャーニーを包括的にサポートするクラウドインテグレーションが得意なMSPも増えました。その一社がNHNテコラスです。
NHNテコラスは、パブリッククラウドが普及し始めた早い時期にクラウドインテグレーション事業を開始し、以降はAWSを中心に他のパブリッククラウドも含むマネージドサービスを提供するAWSの公式パートナーです。高度なソリューションの設計・実行能力やDevOps観点での柔軟なクラウドインフラストラクチャの設計など、AWSでの安定運用を実現する高い技術力が評価され、AWSが定める「AWSマネージドサービスプロバイダー (MSP) プログラム」を取得しています。AWSに精通したエンジニアが監視・運用・構築などAWSの活用を支援する「C-Chorus」というブランドで提供しています。
C-ChorusのMSPサービスの最大の特長は、自動化・効率化を踏まえた運用設計から24時間365日の監視体制、障害発生時の一次対応までを一貫して提供できるところにあります。また、AWSのベストプラクティス「Well-Architected フレームワーク」に沿ったAWS運用のアドバイスやコンサルティング、ITインフラの最適化に対する技術支援、設計・構築・クラウド移行作業を行うインテグレーションサービスなど、豊富なメニューを用意しているという特長もあります。
さらにC-ChorusのMSPサービスは、多くの企業に導入されるなど実績も豊富です。
たとえば、大手スポーツ用品メーカーのミズノ株式会社では、専門スキルを持った人材が少なく、インフラの運用・監視を従来のMSP事業者に任せっきりになっており、AWSの構成、現状の設定や稼働状況、監視体制などがまったく把握できていない状態に陥っていました。障害発生のリスクに不安を感じていた同社は、AWSの運用改善はもちろん、安心して運用を任せられるパートナーを新たに探すべく、MSPの移行を検討。そこで、24時間365日の即時障害対応、開発・検証環境をベストエフォートで対応するなど「AWSを熟知している点」を高く評価し、C-Chorusへの移行を決定しました。NHN テコラスのノウハウを活かした監視設定により、AWSの利用料も含む大幅なコスト削減とAWS構成の最適化、障害検知の精度向上を実現しました。
また、教育機関向けWebサービス事業を展開する企業では、オンプレミス環境からクラウドへの移行ノウハウが不足していたおり、AWS上の構築から運用管理まで一貫してC-Chorusのサービスを利用しました。NHNテコラスにアウトソースできたことにより、構築や運用における担当者の負担が軽減されただけでなく、運用ドキュメントを作成したことでクラウドのノウハウを蓄積することもできました。
「クラウドの知識のある先端IT人材が不足しているため、自社運用が厳しい」「AWSの運用ノウハウがない」「MSPを検討しようにも同類のサービスがたくさんあり、メリットがよくわからない」といった悩みを抱える企業は、ぜひ一度NHNテコラスにお問い合わせください。
※1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」 (2019年3月)
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