企業でシステムを構築する上で、システムの土台となるインフラの選択肢が増えてきました。昔は物理的なサーバーを購入し、会社の隅っこに設置して運用することが多かったのですが、今やサーバーを自社の手元に置く必要は無くなり、必要な時だけ借りて使うというやり方が主流になりました。
今回は、サーバーを借りる選択肢となりうるクラウド(IaaS)とレンタルサーバーとの違いについてご紹介していきます。双方のメリットを押さえて、利用シーンに応じて使い分けていきましょう。
クラウド(IaaS)とレンタルサーバーで共通すること
クラウドとレンタルサーバーは、サーバー事業者が持つサーバーの一部を借りて、システム構築に利用できるサービスです。他の利用者と共有して使う共有型と、利用者を限定させる専有型がありますが、共有型の方が利用料が安く、ユーザー数もこちらの方が多くなっています。
そもそもサービス提供者であるサーバー事業者は大きなデータセンターに大量のサーバーを設置、運用しているため、自社にサーバーを設置するよりもセキュリティ性が高く、性能の良い機器を大量に購入しており、コストパフォーマンスの高いサービス提供が可能です。
また、物理的なサーバーに障害が発生した時は、利用者がハードウェアに対して何か対処する必要はありません。障害対応はサーバー事業者が責任をもって対応してくれます。ただ、ハードウェア障害により、サーバーの上に載っているアプリケーションも停止することがあります。その場合は、アプリケーションのサービス再起動など、対応を利用者で行う必要があります。
クラウドの特長とメリット・デメリット
それでは、まずクラウドの特長を見ていきましょう。
クラウドとは?
仮想化技術を利用し、1台のサーバーの中に複数のサーバーを構築しています。特長としてレンタルサーバーとの違いは大きく3つあります。スケールアウト・インができるスケーラビリティ、Webサーバー内のカスタマイズができるだけでなく、データベースやストレージなど様々な機能が提供されており拡張性が高いこと、料金が時間単位の従量課金であることです。
クラウドのメリット
クラウドのメリットとして大きく2点を挙げて説明します。
【1. 拡張性】
クラウド事業者が提供するサービスは、サーバーの提供だけではなく、ローカルIPのレンジを払い出し運用できるネットワークサービスやグローバルIPの払い出し、OSイメージのバックアップ、ロードバランサーなど、サーバー領域に限定されず、システム全体の観点から構築することができます。
1システムの構築だけではなく、会社全体での運用やITシステムの構築が必要な場合、アプリケーションやインフラに必要な細かな設定のハンドリングを、自社内で行うことが可能となります。
【2. 柔軟性】
ITを使ってビジネススピードを上げるためには、まずは小規模でシステムを構築、テストを行い、システムの方向性が固まったら本格的にシステム構築へ乗り出すというフェーズが必要になります。
クラウドには、インスタンスタイプという概念があります。それは、CPUなどの性能をインスタンスタイプを変更することによって上げたり下げたりすることができるものです。
そのため、小規模でシステムを構築する際は、最低限必要なスペックを搭載したインスタンスタイプを採用し、本格的なシステム構築の際はインスタンスタイプを上げてシステムを増強させることが可能です。
また、システムの本番リリース後、思わぬリソース不足が発生した際にも、インスタンスタイプを増強させたり、サーバーを一時的に増やしたりして対処することができます。
クラウドのデメリット
デメリットについても確認しておく必要があります。
【1. 費用が高額になる可能性】
従量制のサービスが多く、処理やデータ転送量(通信)が増えた場合に料金が高額になります。クラウドはスケールアップやスケールアウトで最適化しながら必要なときに必要な分だけ利用するようにします。
【2. セキュリティ対策の必要性】
ソフトウェア、リソース選択の自由度が高い反面、セキュリティ対策は責任分解点がしっかりしており、クラウド内のセキュリティは事業者が、クラウド上のセキュリティはユーザー側で対策を行う必要があります。クラウド事業者のパートナー企業がクラウド用のセキュリティサービスを提供されているため、セキュリティ対策に迷ったらパートナーに相談してみるのも一つの手です。
【3. 技術知識の必要性】
レンタルサーバーに比べると、カスタマイズの自由度は上がりますが、サービスを使いこなすには高い専門知識が必要となります。ユーザー側で解決できない場合はクラウド事業者の提供するサポートサービスやパートナー企業に相談しましょう。
レンタルサーバーの特長とメリット・デメリット
次にレンタルサーバーの特長を見ていきましょう。
レンタルサーバーとは?
レンタルサーバー事業者から提示されている料金プランから最適なものを選び、契約することでサーバーを遠隔から利用することが可能となります。
簡単なWebサイトを作りたい時は、サーバー構築後に、WordPressなどのCMSを自動インストールすることで、すぐにWordPressの実装に着手することもできます。
本来はデータベースとサーバーを連携させるための設定が必要となるのですが、代わりにレンタルサーバー事業者がやってくれるので、セットアップが簡単です。
契約は月額ではなく、3ヶ月や半年、1年など長期間の契約が一般的ですが、利用料金は安く設定されているため利用しやすくなっています。
レンタルサーバーのメリット
レンタルサーバーのメリットとして大きく2点を挙げて説明します。
【1. 簡易性】
レンタルサーバーは、クラウドよりも簡易的にサーバーを構築することが可能です。利用プランも複数に限定されており、サーバーを構築するためにプランを選ぶだけで、ほぼサーバーの構築作業は完了です。利用プランの違いも、ディスク量の多さやオプションの量などによるもので、大きな違いはありません。
クラウドのように、細かな設定が必要な場合ではなく、小規模なシステムを構築するだけで十分といった場合に利用すると効果的です。
【2. インフラ環境整備の容易性】
レンタルサーバーの事業者は、サーバーだけではなく、メールサービスやドメイン発行サービス、SSL証明書の無料発行など、クラウドだけで実現しようとすると、技術や時間が多くかかる作業を、サービスとして利用できる企業もあります。
企業のインフラとして最低限必要となるものを、レンタルサーバー経由で揃えてしまうということも可能です。
レンタルサーバーのデメリット
レンタルサーバーのデメリットも確認していきます。
【1.他の利用者の影響を受ける】
サーバーを共有している一部の利用者がシステムに負荷をかける行為を行った場合、その影響をうけて、サーバーの動きが重くなることがあります。
【2.機能拡張や設定などの自由度が低い】
ユーザーの用途を想定してパッケージ化されているサービスが多く、サービスで提供されていない機能は利用できません。
ユーザー側でカスタマイズができないので要件に合わないこともあります。そのため、ビジネスなどで大きなシステムを組んで利用するには不向きです。
クラウドとレンタルサーバーは、双方ともIaaSのサービスですが、利用するシーンは大きく異なります。
細かな設定は求められない小規模なシステムであればレンタルサーバー、ビジネスでインフラを導入する場合や最初は小規模でも今後拡張を想定するシステムの場合はクラウドの利用を検討するようにしましょう。
企業に必要なサービスやサポートは何なのかを考えると、どちらを採用すべきか明確になってくるはずです。
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