一企業としてのIT戦略を考える上で、インフラをオンプレミス(物理サーバー構成)のまま運用を継続するのか、それともクラウド環境へ移行するのか、この選択が日々求められています。そして、企業はオンプレミスとクラウドのメリットを天秤にかけながら意思決定を行っています。
それでは実際に、クラウドの利用がどの程度普及しているのかご存知でしょうか?この記事では、クラウド利用の普及度合いをご紹介するとともに、どのような理由でオンプレミスやクラウドを企業が選んでいるのかということも合わせてお伝えします。
他社の意思決定も参考にしながら、IT戦略を検討していきましょう。
オンプレミスのインフラを使い続ける2つの理由
今やクラウド全盛期となり、クラウド環境を使うのが正しいという風潮さえ感じることがあります。一方、オンプレミス環境を使うことによるメリットもあり、意図的にオンプレミスのまま運用を継続している企業もあります。
高性能が求められるデータベース
オンプレミス環境が効果を発揮する場面が、サーバーに載せるシステムの制約で、サーバーに高いスペックが求められる時です。オンプレミス環境では、サーバーのパーツごとにカスタマイズできるため、システム側の要求に応じてインフラ環境を準備することができます。
また、データベースのようにシステムの根幹となる機能であり、アクセスが多いものもオンプレミス環境で威力を発揮します。サーバーの処理性能をバーストさせず、安定性が必要な場合は物理サーバーが採用されることがあります。
クラウドよりも短いレイテンシ
物理サーバーは自社環境と直結しているため、クラウド環境と比べてレイテンシ(反応速度や待ち時間など)が短い傾向があります。クラウド環境を運用する中で直面することが多い問題が、このレイテンシの問題です。
一度クラウド環境へ移行したものの、レイテンシ問題が深刻になった結果、オンプレミス環境へ戻すという事例もあります。
クラウドのインフラへ移行する2つの理由
昔はオンプレミス環境しか無かったのですが、クラウドという概念が登場し、そして現在では誰でも簡単にクラウド運用を始められる環境が整っています。クラウド環境へ移行することのメリットも多くあり、企業がインフラをクラウド環境へ移行することも当たり前になってきました。
サーバー調達スピードの早さ
クラウド環境へ移行する理由の1つが、サーバー調達スピードの早さです。物理サーバーの場合は、機器の購入や設置、設定などにより、長くて2,3ヶ月かかる場合も多々あります。
一方、クラウド環境では即時にサーバーを構築することがてきるため、サーバーの提供スピードだけではなく、企業のビジネススピードさえ上げる効果があります。
拡張性の担保
ZOZOTOWNというネット通販の大手企業がクラウドへ移行した事例が公開されました。ユーザが商品のイメージを持つために必要な商品画像ですが、これまでオンプレミスの機器に保存していたそうです。
ところが、それらの機器には拡張性がなく、容量も60TBを越えたこともあり、無制限に拡張ができる環境を検討した結果、クラウド環境への移行を採用し課題を解決しました。
参照元:TechTargetジャパン
クラウドには拡張性だけではなく、複数の環境にコピーされる冗長性も担保されているサービスがあります。このような環境は、オンプレミス環境で手軽に実現することは難しいものです。
情報通信白書から見るクラウドの利用動向 (令和2年度版)
それでは、実際にどれほどの企業がクラウド環境を利用しているのか見ていきましょう。ここで参考となるものが、総務省が公開している情報通信白書です。最新の令和2年度版をもとに分析します。
総務省|令和2年版 情報通信白書|企業におけるクラウドサービスの利用動向
クラウドサービスの利用推移
クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合を示しているものですが、2017年には利用率が50%を突破しています。今や60%以上の企業において、全体的もしくは一部にてクラウドサービスが利用されていることがわかります。
■クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合
2019年:64.7%
2018年:58.7%
2017年:56.9%
2016年:46.9%
クラウドサービスの利用内訳
それでは、クラウドサービスの中でもどのようなサービスを利用しているのかというと、1位は「ファイル保管やデータ共有」です。ドラッグアンドドロップなどの簡単なGUI操作で利用できることが、この結果に繋がっていると推測されます。
■利用しているクラウドサービスの内訳
「ファイル保管・データ共有」:56.0%
「電子メール」:48.0%
「社内情報共有・ポータル」:43.0%
クラウドサービスを利用する理由
最後にクラウドサービスを利用する理由ですが、「資産や保守体制を社内に持つ必要がないから(アウトソーシングが可能な点)」がトップになりました。これまではハードウェアの障害やメンテナンスがある場合、休日や深夜の作業することが当たり前でしたが、その体制を取らなくても良いことは企業にとっても、社員にとっても嬉しいことですね。
■クラウドサービスを利用する理由
「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」:45.9%
「場所・機器を選ばずに利用できるから」:43.3%
「安定運用、可用性が高くなるから(アベイラビリティ)」:36.8%
クラウドサービスの利用は、国の統計からもわかるように確実に広まっています。一方、クラウドが広まったとしても、オンプレミス環境を使うメリットもあります。
どちらの環境を選択するのかというIT戦略に正解はありません。あなたの企業が持つ特性や、システム側から求められる要件に応じて、意思決定を進めていきましょう。
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