「オンプレミスからクラウド移行! AWSマイグレーションことはじめ」の【後編】です。
【前編】ではオンプレミスのデメリット、AWSに移行するメリット、クラウドに移行した場合の責任範囲、また、3つの移行フェーズのうち2つの評価フェーズ(Assess)、移行準備フェーズ(Mobilize)について解説しました。【後編】では、移行準備フェーズでご紹介した、7Rのうち3つリホスト、リプラットフォーム、リファクタリングについて実際のオンプレミスの構成図を題材として、構成図から見てどう変わっていくかと、移行フェーズと近代化 (Migrate & Modernize)について解説していきます。
連載「オンプレミスからクラウド移行! AWSマイグレーションことはじめ」
【前編】
▶【後編】
構成図で見る移行戦略
実際のオンプレミス環境の構成を題材として、構成図から見てどう変わっていくかを見ていきたいと思います。
以下の構成図は、オンプレミス環境でロードバランサー配下にWEBサーバーが2台、WEBサーバーはファイルサーバー1台を参照し、配下にDBサーバーを1台設置する構成です。
移行戦略案
左図のオンプレミス構成から、右図のクラウド構成に移行した構成図になります。
移行後は色々と増えてますので、1つずつ見ていきます。
WEBサーバーは”リホスト”でそのまま移行
まず、WEBサーバーをリホストでAmazon EC2に移行します。
リホストでは現状を変えずに、”そのまま移行”するのでアプリケーションの改修は不要です。
DBサーバーは”リプラットフォーム”で移行
次にDBサーバーはリプラットフォームを使い、クラウドに最適化されたDBサーバーのフルマネージドサービス Amazon RDSへ移行しています。*マルチAZ配置により、プライマリがダウンしても自動でスタンバイがプライマリに切り替わります。またAmazon EC2からAmazon RDSへの接続も自動で切り替わります。
*マルチAZ配置とは
AZとは「Availability Zone(アベイラビリティーゾーン)」の略称です。AWSにはリージョンと呼ぶ運用拠点が世界各国に30カ所あり、日本では東京と大阪にリージョンが存在します。さらに各リージョン内で独立して存在する2つ以上のデーターセンター群をAZと呼び、東京リージョンにAZは4カ所あります。マルチAZ配置は、複数のAZをまたいでシステムを冗長化しますので、可用性や耐障害性を高めることができます。
※リージョン数、AZ数は2022年12月現在の数値
▼お役立ち資料
オンプレミス環境からAWS環境への データベース移行を成功させるポイント
ロードバランサーはApplication Load Balancer(ALB)へ”リファクタリング”
WEBサーバー上部のロードバランサーは、リファクタリングによりALBに変更しています。ALBは80番443番ポートに対してバランシングをしますので、オンプレミスのロードバランサーと同一の機能となります。本来は設計の改修が必要ですが、今回はほぼそのまま代替えになります。
ファイルサーバーはAmazon EFSへ”リファクタリング”
ファイルサーバーもリファクタリングでの移行になっており、移行先はAmazon EFSサービスでNFSマウント可能な共有ファイルストレージサービスです。マネージドサービスなのでサーバーの管理は不要になります。
サーバー負荷に応じた自動スケーリングを導入
既に何度か登場しているAuto Scalingサービスを取り入れています。Amazon EC2の最大、最小、希望台数を予め設定しALBと組み合わせることで、ピークタイム、オフピークタイム中に設定に応じた自動スケーリングが可能となります。
SSL証明書の自動化
ALBとAWS Certificate Managerにより、SSL証明書も自動管理されます。毎年行っていたSSL証明書更新という管理から解放され、さらには無料です。
以上となりますが、いかがでしたでしょうか。一見、オンプレミス環境と比べると細かく、情報が多いですが、サービス継続性が高く、耐障害性に強い構成となり、アクセスの増減に柔軟に対応ができるアーキテクチャになりました。また、ユーザーが管理する範囲も大幅に削減されて、SSL証明書の更新なども自動で行われます。
・AWSを利用する5つのメリット
・AWSへの最適な移行プランを考える
・移行のゴール設定とステップ
・移行の3つの不安と解決策
その他、考慮すべきポイント
その他、状況に応じて考慮が必要な場合があります。例えば、大容量の数百TBから数千TB規模のデータを移行したい場合は、どのようにデータを移行させていくかを検討する必要があります。他にもオンプレミス環境との連携を必要とするハイブリッド構成など、要件により個別に検討するケースも出てきます。
それぞれの要件によって、AWSからも支援サービスが用意されています。
・大容量のデータを移行する
対応サービス: AWS Data Sync , AWS Snowcone , AWS Snowball , AWS Snowmobile
・データベースのエンジンを変更したい
対応サービス: AWS Database Migration Service , AWS Schema Conversion Tool
・無停止での切り替えが必要
対応サービス: AWS Database Migration Service
・オンプレミス環境との連携が必要
対応サービス: AWS Direct Connect , AWS VPN
移行計画の作成
コストの見積もり、移行先構成図の作成などの移行スケジュールを立てていきます。移行スケジュールでは、AWSアカウントを新規作成してから、移行先ネットワークの構築、サーバー移行後の動作検証、問題点が出てきた場合の対応、本番環境の切り替え、切り替え後の経過観察などをスケジューリングします。
移行フェーズと近代化 (Migrate & Modernize)
移行戦略がきまり、実際に移行を進めるフェーズです。
Migrate
移行計画・準備が整いましたら、計画に沿って移行を進めていきます
実施するポイント例
・ AWSアカウント取得
・ 移行先環境の構築
・ 移行実施
・ 動作検証
・ 本番化 (DNS切替)
本番環境の切り替え前まで進めて、動作検証を十分に実施のうえ切り替えを行っていきます。
移行後の経過観察
移行後は、Amazon CloudWatchなどのAWSの監視サービスを利用して、稼働状況はどうか、サーバースペックに問題ないか、ディスクサイズは足りているかなどをみていく必要があります。そして、モニタリングの結果、システムの負荷が高い状況が継続するようであれば、チューニングなどを検討するようにします。
クラウドなら継続的改善が容易
監視の結果、当初の予測と違ったらすぐ修正が可能です。チューニングでは不足しているリソースに対して補充をするのも大事ですが、余剰リソースについても、無駄を省いてコストをカットしていきましょう。チューニングを継続的に行うことで最適化を目指します。
Modernize (近代化)
「継続的改善」が大事で、これを容易にできるクラウドメリット最大限生かしましょう。リソースの増減だけではなく、より、可用性を重視したインフラにシフトしたり、徐々にマネージドサービスにシフトしていくことで、管理する範囲を減らし、運用負荷を軽減するなど最適化していきます。
一度の移行で全てを取り入れなくても良い
一度の移行で全てを取り入れる必要はありません。まずはリホストでクラウド環境に移行し、その後Amazon EC2を2台にして、冗長化したりオートスケーリングを採用した柔軟なアーキテクチャを構成するなど、段階的にニーズに応じて取り入れることは実際のケースとしても多い状況です。
クラウド移行で考えることは?(まとめ)
・移行アプローチの3フェーズ「評価 Assess・移行準備 Mobilize・移行と近代化 Migrate & Modernize」を意識して進める
・移行対象の洗い出し、移行対象の選定
・移行戦略“7R”に当てはめて、どう移行していくかを明確にする
・まずはリホストから移行して段階的にクラウド最適化を検討
NHNテコラスはAWS移行コンピテンシーの認定を受けた、AWS最上位のプレミアティアサービスパートナーです。今回、ご紹介した全フェースを通して、お客様に最適なシステム構成と移行戦略をご提案し、実現しますので、お気軽にご相談下さい。
AWS導入・移行支援サービス
連載「オンプレミスからクラウド移行! AWSマイグレーションことはじめ」
【前編】
▶【後編】
・AWSを利用する5つのメリット
・AWSへの最適な移行プランを考える
・移行のゴール設定とステップ
・移行の3つの不安と解決策