AWSに代表されるクラウドインフラは、従来のオンプレミスと異なり、必要な時に必要な分だけを利用できる従量課金型のサービスです。そのため、利用しない時や不要になった時に簡単に停止や削除ができ、不要なコストを削減しやすいという利点があります。また、クリックだけで瞬時にサーバーを用意することができるため、オンプレミスを準備する際に掛かっていた時間や人的リソースを削減することも可能です。このように、オンプレミスの運用時に掛かっていたコストや時間、人的リソースを、クラウドに移行することで大幅に削減することができ、削減によって生まれたリソースを新しいビジネスに当てることができるようになるでしょう。
しかし実際には、クラウドへの移行を行ったがあまり効果を感じられていない方、また、更なるコスト削減を期待されている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、運用しているAWSの料金を削減する方法を前編と後編に分けてご紹介します。
連載「AWSの料金を削減する方法」
▶AWSの料金を削減する方法 【1】AWS利用状況の把握
AWSの料金を削減する方法 【2】削減のための5つのTIPS
STEP1 ビジネス的な観点から優先事項を整理する
AWSのコスト削減を行う前に、必ず考えておかなければならないことがあります。それは「コストとビジネス要件の関係」についてです。
コストとビジネス要件はトレードオフの関係
AWSだけでなく、企業がITインフラを運用するにあたって、コストと耐障害性、パフォーマンス、セキュリティなどのビジネス要件は相反する関係にあります。例えば、冗長構成であれば、障害発生時に稼働中のシステムが停止するリスクを軽減できますが、本番稼働しているサーバーに加えてスタンバイさせておくサーバーリソースが必要なため、インフラコストは高額になります。一方で、シングル構成であればインフラコストは安く抑えられますが、障害発生時に稼働しているシステムが停止し、ビジネスに影響が出る可能性が高くなるでしょう。
ここで明確にしておきたいことは、ビジネスにおいて優先するべきものは何なのか、その優先するものによって発生しうる影響やリスクをビジネスとして許容できるか、ということです。AWS上で稼働するシステムの利用用途に応じて、コストと比較したときにどの要件が重要なのか、外すことができないのかをきちんと定義し、その上でどのようにコストを削減していくかを考える必要があります。
STEP2 AWSの利用状況を知る
次のステップは「AWSの利用状況を知る」ことです。自社でAWSをどのように使っているのか、どのぐらいの利用料が発生しているのかを明らかにしていきます。またAWSの利用状況を知ることで、AWSのコスト削減のための改善ポイントを洗い出します。
AWSの利用状況をチェック
請求書や管理画面などを元に以下の項目を確認します。
- どのサービスに費用が多くかかっているか?
- どこのリージョンで利用しているか?
- 使った覚えのないサービスや停止を忘れているサービスがないか?
- どういったAWSの構成でシステムが動いているか?
- どんな用途か? 常時稼働が必要か?
サービスの利用状況は、定期的なチェックが必要となるため、都度目視で行うのは大変な作業となります。そのため、AWS Trusted AdvisorやAmazon CloudWatchなどのモニタリングサービスを活用することもおすすめです。
AWS Trusted Advisorとは?
AWS環境を、コスト・セキュリティ・CPUやディスク使用率等などのリソース状況・耐障害性など5つのカテゴリで分析し、最適化状況を可視化することができる便利なツールです。利用しているAWS環境の中で無駄の多い状況を可視化でき、指摘に合わせて最適化を行うことができます。
AWS Trusted Advisorはサポートプランによってチェック項目が異なります。「ビジネスまたはエンタープライズサポートプラン」では、コストの最適化、パフォーマンス、セキュリティ、耐障害性、サービスの制限の5つのカテゴリにおいて2020年9月の時点で全115個のチェック項目が利用できますが、「ベーシック、開発者サポート」では6つのセキュリティチェックと50のサービス制限チェックしか利用できないので注意が必要です。
Amazon CloudWatchとは?
AWSリソースとAWSでリアルタイムに実行されるアプリケーションを監視し、ある基準を超えた時に通知を送信したり、モニタリングしているリソースを自動的に変更したりするアラームを作成することができるツールです。
ビジネスまたはエンタープライズサポートプランであれば、CloudWatch Eventsを利用してAWS Trusted Advisorでのチェック結果をメールやSlackへ通知することができます。例えば、使用率の低いAmazon EC2インスタンスがある場合にはAWS Trusted Advisorで指摘がされます。それを元に指定した宛先へメールで通知をすることで、タイムリーにインスタンスの停止を行うことができ、コスト削減に役立ちます。
以上が「AWSの料金を削減する方法 【1】AWS利用状況の把握」でした。次回「AWSの料金を削減する方法 【2】削減のための5つのTIPS」では前回確認したことを元に実際にAWSの料金を削減する方法を5つ紹介していきます。
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